ARTISTS
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ロジャー・バレン
Roger Ballen
The Theatre of Apparitions
2016

私たちは写真を見るとき、そこに写る建物や文字、人の表情などの情報から“意味”を解読しようとします。そして時に、読み解くのに十分な情報を入手したら、もう写真を見なくなってしまうこともあるかもしれません。しかし、南アフリカを拠点に活動するロジャー・バレンによる、不穏な雰囲気が漂う抽象的なこのモノクロ写真を見たら、私たちは全く逆の反応をするかもしれません。写真の中には意味を教えてくれるヒントがないせいで、私たちはイメージの中に自身の本質や心理を投影しながら、次第にダークな世界へと引き込まれていきます。
 
「The Theatre of Apparitions(亡霊の劇場)」と名付けられた本作は、廃虚となった女性刑務所の黒く塗られた窓に残された落書きにインスピレーションを得ています。ガラスにスプレー絵の具を吹き付け、そのガラス板に自然光を通して撮影して作られますが、写真の中に登場する亡霊たちは、私たちにさまざまな感情を呼び起こします。
ロジャー・バレン
1950年、ニューヨーク生まれ。18歳から写真を始め、撮影しながら世界を旅し、1982年に南アフリカへと移住しました。初期作品『Outland』(2001年)から、自身をアーティストとして意識しながら作品を作るようになり、目の前の事実をありのままに捉えるのではなく、時には演出も加えながら人間の本質をヴィジュアルで表すことに挑むようになりました。