1872年、カルフォルニア元州知事のリーランド・スタフォードが、「ギャロップする馬の4本足が、同時に地上から浮く瞬間があるのか?」という巷で議論を呼んでいた問いの答えを求めたのが、その当時、飛ぶ鳥を落とす勢いの人気写真家であったエドワード・マイブリッジ。スタンフォードから潤沢な資金と彼の競走馬オクシデントを被写体として提供され、マイブリッジは肉眼ではとらえられない証拠を掴むための写真技術の開発にのめり込んだ。
試行錯誤を重ねて制作した写真装置を使い、1877年に1秒で17メートルもの距離を移動する馬の一瞬の動きをとらえた。さらに翌年には、その装置を12台並べ、疾走する馬の連続写真の撮影に成功。その成果は新聞、雑誌、科学専門誌など数々のメディアで紹介され、連続写真がもたらした視覚効果は多くの人々に衝撃を与え、喝采を浴びた。1886年からは動物だけでなく人間も対象とし、羽ばたく鳥、走る犬、荷物を運ぶ人間など、あらゆる「動き」を記録。のちの映画の発明にもつながる一歩は、当時の人々にイメージの新たな可能性を提示した。
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