植物学者、彫刻家、教師といった多様な顔を持つドイツの写真家カール・ブロスフェルト。彫刻の教材用として採取した植物約6000点を、30年以上に渡って写真に収め続け、1928年、63歳で写真集『Art Forms in Nature(芸術の原型)』として刊行。自然界の独特の形態に対する強い探究心から生まれた本作は、国際的なベストセラーとなり、ブロスフェルトは「ノイエ・ザッハリッヒカイト(新即物主義)」のパイオニア的写真家となる。本作は約100年の歳月を経てたいまもなお、静物写真のマスターピースとして後世に影響を与え続けている。
自身で採集したさまざまな植物のパーツを、自家製カメラで数十倍にクローズアップして撮影することによって、つるは鋭利な針金のように、枝や茎は重厚な建築物のように、精密かつ硬質に写し出すことに成功している。実験と観察の精神によって自然の造形美をアート写真へと昇華させたブロスフェルトの表現は、カメラを通じた新たな認識の方法に貢献したとして、ドイツの思想家ヴァルター・ベンヤミンにも称賛された。
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