アメリカの美大を卒業後、ドイツのデュッセルドルフ芸術アカデミーで学んだ鈴木崇は、「見るときに生じる認識のズレ」をテーマに作品制作を行なっている。「BAU」シリーズでは、カラフルなスポンジを組み合わせてさまざまなフォルムを構築した。黒い背景を用いることでその形状はくっきりと際立ち、ドイツ語の「Bau」が意味する「建築」「構造」という側面を浮かび上がらせている。それを膨大なパターンとして増殖させることで、日用品であるスポンジに別の意味を加えていく。
このシリーズは500点にも及び、スポンジはアイコンのように繰り返し現れ、それぞれのイメージは様々な造形美をたたえている。それは素材、図形、色彩の組み合わせであり、その形態はポップアートとミニマルアートという、20世紀芸術のふたつの要素がユーモラスに組み合わさったものとも言える。シンプルなアイデアによって身近な日用品はたちまちアートへ変容し、8.5×11センチのスポンジと同じようなサイズの作品を通して、私たちが見ているものは何かを問いかける。
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