「Color Photographs」は、当時の横田に定着しつつあったモノクロのイメージを打ち破るような、ときに毒々しいまでに色鮮やかで抽象性の高いイメージ群。それまでの記憶に力点を置いた作品と一線を画し、写真の物質性にフォーカスを当てた新境地といえるシリーズである。
本作において横田は、何も写っていないフィルムを50〜100枚ほど重ねて熱現像している。その行為は、写真を「記録する」という本来の役割から切り離し、写真を構成する物質を主題にする試みである。例えるならば、身体が切断され、骨、肉、血が露わになることでその構成要素を再認識したり、ガラスのコップが割れ、コップとしての機能を果たせないことで、それが鋭利なガラスという物質であったことに気づくような効果を狙っているのだ。フィルム写真は、プラスティックのシートの上に銀が混ざった乳剤を塗り、化学反応を起こしてイメージを生み出す構造を持っている。つまり、写真とは物質と化学反応によって作られているに過ぎない。本作ではその事実を可視化し、見事に美しいイメージへと昇華した。
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