世界初の写真集『British Algae: Cyanotype Impressions』を1843年に刊行したアンナ・アトキンス。サイアノタイプとは、印画紙の上に被写体を直接置いて像を定着させるフォトグラムの技法のうち、日本では「青写真」とも呼ばれる、太陽光(紫外線)によって感光させる古典技法。複製がない、少部数の私家版だったため、一般的には1844年のウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボットによる『自然の鉛筆』が初の写真集とされているが、アトキンスの写真集も実は歴史に残る一冊だ。また、アトキンスは写真を発明したタルボットや、サイアノタイプを発明したジョン・ハーシェルとも交流があったという。
写真史におけるパイオニアのひとりである彼女が、1853年に植物学者のアン・ディクソンとまとめたのが本作『Cyanotypes of British and Foreign Ferns』。サイアノタイプで、イギリス国内外のシダ植物が標本のように収められている。写真の黎明期に研究目的で残された写真の数々は、いまなお写真家たちへ多大な影響を与えている。
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