1958年に発表された「王国」は、修道院を取材した「沈黙の園」と、和歌山市の婦人刑務所を舞台とした「壁の中」という、ふたつの空間を舞台とした二部構成となる。ここでは北海道・当別のトラピスト男子修道院を撮影した「沈黙の園」を展示している。外部と隔絶され、厳しい規律によって自由を奪われた空間で生きる修道士たち。極限状態だからこそ浮かび上がる、人間の持つ真の姿に迫る渾身のドキュメントだ。
奈良原は1962年にフランスのファッション誌の依頼を受けパリを訪れる。当初3カ月の予定だったが、そのままパリを拠点としてヨーロッパを旅し、 3年間ヨーロッパを旅することに。道中で撮られた「ヨーロッパ・静止した時間」では、未知なる光景との出会いが自身に吸収していくかのように、約3万枚ものネガに焼き付けた。パーソナルな記録ながら、モノクロとカラーが混じり合った鮮烈なイメージは、既存のロードムービーの枠を超えた、美的で幻想的な時間が凝縮されている。本展ではふたつのシリーズを通して、静と動、内と外といった、対極にある対象から奈良原のまなざしに触れる。
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