幼少期を一時ケニアで過ごし、オランダで写真を学んだヴィヴィアン・サッセン。アフリカの強く眩しい光、色鮮やかなカラーパレット、現地の人々の黒い肌、そこに差し込む影などを抽象化して組み合わせた、グラフィカルなイメージで人気を博す。
代表作のひとつ「UMBRA」は、ラテン語で「影」を意味する。本作でサッセンは、彼女の表現において「影」が重要なエレメントである理由を探求し、その主題を不安、恐怖、欲望のメタファーとしてとらえ、写真、映像、ドローイング、詩、サウンドなど、さまざまなメディアを横断しながら作品化した。映像作品「HURTLING」も、「UMBRA」を構成する作品のひとつ。オランダ出身の詩人、マリア・バーナスとお互いの「影」についての対話を重ね、「HURTLING」という詩が生まれた。ネガポジ反転したフレームの中で、聴覚障害者である南アフリカ人のデヴィド・パトロが、その詩をリーディングする手話の動きだけに焦点を当てた本作は、ヴィヴィアンが常に向き合ってきた光と影の関係性のひとつの答えといえるだろう。
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