代表作「Diorama Map」シリーズでは、ひとつの都市にフォーカスし、数カ月かけて街をスナップ撮影したのち、膨大な数の写真をコラージュすることで一枚の都市の地図を作り上げる西野壮平。本作では、アルプスの山麓からアドリア海に至るまで、650キロに渡ってイタリアを横断するポー川に焦点を当てた最新作。2017年の春と夏にポー川を訪れた西野は、車や船で、あるいは徒歩で旅をしながら、ポー川流域を西から東へ移動し、スナップで撮影していった。
撮影の過程では、川の流れる音にインスピレーションを受けたとともに、さまざまな川と人々の営みに触れたという。長い時間を経て街は発展し、人の生活は変化し、生態系も変わりつつある。時に災害をもたらし、生活の脅威となるが、川はいつもそこに存在し、それは人々にとって精神的な拠り所でもあった。一本の川を見る旅は、まるで生命の一生を垣間見るような根源的な旅でもあったという西野。川が蓄積した歴史や人の営みと向き合い、感じたその経験が、無数のイメージが合わさったコラージュに凝縮されている。