二枚のコンタクトシートは、森山大道が写真家として歩んできた50年間の膨大な古いネガを振り返り、新しく制作されたもの。過去作品をもう一度、現在の目線で再構成し直すという意図で、リミックスされている。「一本のフィルムの上を歩いてきて振り返ると、そこは迷宮だった」という森山の思いから、「ラビリンス」と題された。一見、一枚のコンタクトシートのようだが、その中にはさまざまな年代、撮影日のネガが混在している。
一枚目は、名作『光と影』(1982年)を撮影していた時期の写真が、アウトカットも含めて集められている。70年代後半は森山が再び旺盛に写真を撮り始めた頃でもあり、印象的なカットがいくつも見受けられる。もう一枚は、『写真時代』で毎月8ページの連載をしていた80年代始めのもの。連載のためにフォトグラムなどの実験的手法に手を出した時期でもあったという。その中で、あまりに暇だったので、自分自身に化粧を施してみたのが、珍しい森山の女装セルフポートレイトだ。ネガのトランスフォーム、男から女へのトランスフォーム、「ラビリンス」に見るさまざまな変容の形。