市田小百合はロンドンに渡ったのち、2012年からニューヨークを拠点としている。「Mayu」は、ニューヨークシアターバレエ団所属の日本人バレエダンサーである小栗麻由とのコラボレーション作。ヨーロッパで数年過ごした後に、移民としてアメリカに渡るという、よく似た境遇を経てニューヨークにたどり着いた二人。同じ表現者であり、女性である麻由に出会ったことが、このシリーズが生まれるきっかけとなった。
「Mayu」では、ひとりの女性のしなやかな身体に、夢を追いながら異国で暮らす女性の理想と現実、葛藤、意志が投影されている。都市と自然の両方を舞台に、カラフルな衣装をまとい、時には不自然なポージングをする麻由。その顔はあえて写されておらず、ノスタルジックでありながらも、どこか居場所のなさを感じさせる。あえてオブジェのように撮ることで、シュールさが漂うイメージは、アメリカという異国で自身のアイデンティティを探し続ける、市田自身のポートレイトでもあるのだろう。市田の作品群は、現実とファンタジーのあわいを貫く、強度とレイヤーを併せ持っている。
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