フィンランド生まれのサナ・レートは、2015年から制作をスタートした「Morphologies(形態論)」によって一躍ヨーロッパで注目を集めた。夏に散歩の途中で拾った花の形態や色に興味を持ったことがきっかけで生まれた本作では、植物、身体、色を用いて、さまざまな「形態」を探求している。例えば、色鮮やかな花々を、髭もじゃの男性の顔や胸の上に並べたり、血のようにも見える、どろっとした液体の中に浮かべたり。花の蕾、ドライフラワー、年齢を感じさせる肌、赤い液、赤毛の若い女性など、被写体同士の不思議な組み合わせによって、イメージはよりいっそう非現実味を帯びていく。
ここでは生身の人間に、瑞々しい生花と枯れた花や植物の両方が扱われている。ゆえにファンタジックで魅惑的な物語を描きながらも、自然と人間、生と死の関係性、あるいは美とは何かについての問いを投げかける。ただ美しいだけでなく、毒々しさも孕んだイメージは、リアリティとファンタジーの間にある揺らぎをとらえ、独自の世界へと観る者を誘うのだ。