2014年に長く暮らしていたロンドンから、家族と共にスウェーデン南部に拠点を移したスティーブン・ギル。そこから3年半の年月をかけて制作されたのがこの「Night Procession」。情報であふれていたロンドンから一転し、スウェーデンでは、広大な荒野や鬱蒼とした森がどこまでも続いていた。
ギルは、一見何もないように見えるこの新天地を歩きながら、そこには多様な生命が存在することに気づく。羽毛の塊、動物の足跡、かじられた跡のある枝、食べかけのきのこなどの証拠から、人間たちが眠りに就いた後の夜の森に生息する生き物に思いを巡らせる。動物や鳥、虫の気持ちや行動を想像しながら場所のあたりをつけ、赤外線フラッシュと動きに反応するシャッターを備えたカメラを仕掛けた。真夜中の森は、さまざまな動物たちの躍動し、人間の知らない世界がパラレルワールドとして広がっていた。その場所の何かを作品に取り込みたいと、葉っぱから抽出した樹液を染料にしてプリントを作った、まさに森との共作のようなシリーズ。
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