1871年、イギリスの物理学者であるレイリー卿は、空は青いのに夕焼けが赤い理由は、光の波長よりも小さいサイズの粒子による光の散乱によることを発見した。畑直幸の「Rayleigh」は、この「レイリー散乱」と呼ばれる現象をきっかけに生まれた。大気の性質によって見える空の色が違うことは、畑の色に関する意識の根幹を揺らがせた。地球以外の惑星では、違う色の空や夕焼けがあり、そこにいる生命体は、どんな色の下で生きているのだろうか? 本作では異なる惑星を想像しながら、石にランダムにライティングを施している。
タイヤをモチーフにした「Meat Man」は、さまざまなモノをグレーに塗装するシリーズのひとつ。一見モノクロ写真に見えるが、実はカラーで撮影している。オランダ留学から帰国した畑は、仏画の仏像が光背(光る円形のモノ)を背負っていることに目をつけた。タイヤという光背は畏怖すべき存在となりうるのか。ユーモアな視点から始まった両作は、私たちが見ている色とは、イメージとは何かを問いかける。