奇跡を待つのではなく、自分のイマジネーションの中で奇跡的な瞬間を作りだそうと、Photoshopを使って周囲の光景をコラージュしたシリーズ「Street Errands」。「おつかい」という意味を持つこのシリーズは、キム・カンヒが実際に街中へおつかいに出ているときに、ふと面白いことが起きないかと願ったことがきかっけで、2016年から制作がスタートした。
大量の写真をニューヨークで日々撮影するキムは、完璧な一枚のイメージを撮るのではなく、ふたつのイメージがひとつになる可能性を発見することで、完璧に“見える”ようにPhotoshopを使う。レタッチの跡を不自然に残しているのは、完璧な写真こそが最善だとされる広告写真へのアンチテーゼでもある。一方で、もともとの写真を破壊し、修正する行為は、現在取得しているビザに規制があり、外国への旅行が困難なキム自身の、自由への欲望を満たしている。ふたつのイメージを自在に組み合わせることで、日常の光景にきらめきを与え、もうひとつの世界への扉が開かれるのだ。
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