ルース・ファン・ビークは、1枚の新聞の切り抜きや家族写真、古い本、インターネットから集めたさまざまなファウンドフォトを用い、ユニークな視点で現実の写真を想像のイメージへと置き換える。生け花のシリーズ「The Arrangement 」では、1950~70年代にオランダで刊行された主婦向けの日本の生け花教本を元にしている。実用的でありながらも、グラフィカルで色鮮やかな静物写真を元に、ビークは生け花と似通う性質をもつコラージュを施した。そこでは生け花の細かい作法や象徴的な意味合いは取り除かれ、元の意味や象徴的な要素が強調されることで、生命感あふれる新たな形が姿を表す。
写真を物理的に加工してオブジェ化する行為も、ビーク作品の特徴だ。誰かが撮ったペットの犬の写真を扱った作品では、犬たちに息を吹き込み、宙に浮かせるように、写真を切って折り曲げる。少し手を加えるだけで、犬たちは原形を失い、ふわふわのオブジェのような“失敗した”動物に姿を変える。これらのコラージュにはおかしみとともに、ペットと人間の関係性や、永遠に繰り返される実験と失敗を暗喩するかのような、得もいわれぬ居心地の悪さが同居している。
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