鳥かごの中に閉じ込められた一匹の白い鳥。美しい姿でたたずむそれは、実はアルビノのカラスだという。公園の池を泳ぐ二匹の亀は、まるで井戸端会議をしているようだ。竹之内祐幸は「もうひとつの視点」をテーマに、日常風景を切り取りながら、そこに在る不自然なものや異物をあぶり出している。これまでの写真集『Things will get better over time』や『The Fourth Wall』などで、その一環した視点に触れることができる。
アルビノのカラスも、二匹の亀も、日常生活の中では見過ごされてしまう小さな存在だが、それぞれの時間は同じように流れていく。現代社会の生きづらさを、異物だと思われたり、一般常識から外れてしまう存在に重ね合わせ、その小さな声をすくい取る竹之内。定点観測で追うことによって、私たちに彼らの時間を想像させる。まるで子どものように、すべての物事を等価に見つめるまなざしを通して、そこに散らばる無数の美しさに気づかされる。鑑賞者は想像力を羽ばたかせることで、その世界を分かち合えるだろう。
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