小林健太は自ら撮影した写真をベースに、Photoshopで加工を施す作品で知られる。本展では、ひとつの作品が完成に至るまでのメイキングを見せた新作映像を制作。ポストデジタル世代の小林は、幼少期の体験から、写真に加工を施す感覚を「お絵かき」と表現することがある。お絵かきの際にキャンバスを回したり、遠ざけたり、近づけたりしながら、写真の表面にノイズを加えていく。トラックパッドでピンチイン・アウトを繰り返す行為には、単なる筆のストロークに終わらない運動性、身体性がある。それこそが、絵画を学んだこともある小林の関心の対象であり、デジタルとアナログを繋ぐキーワードなのだ。
この映像は、3作品を同時に見せながら、4章に分かれており、傾きと回転が与えられることで、空間に奥行きが生まれる。写真は質量がなく薄っぺらいが、まるで世界の断面のように存在する。さまざまな時間軸が同時にうごめき、多数に存在する宇宙を重力だけが行き来しているという多元宇宙論に通ずるそうだ。2次元化したものを3次元的に配置する行為を通して、写真的な宇宙論を描こうとしている。
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