色鮮やかなカットアウトを重ね、独自の抽象的な世界観を生みだすイナ・ジャン。2011年にイエール国際モード&写真フェスティバルで入賞し、顔や体の一部が不自然に切り抜かれた女性たちのポートレイトで一躍注目を集めた。その後も、世界各地で展示会を開催する一方、『花椿』『The New York Times』などの雑誌や新聞でコミッションワークを発表し、アートとコマーシャルの領域を自在に横断しながら活動の幅を広げる。近年は、男性社会におる女性への視点に疑問を投げかける新作「Utopia」を始め、彼女の軽やかで遊び心のある作風はそのままに、男性上位社会の問題をテーマとした作品制作に力を入れている。
今回は、ジャンのこれまでの作品を複数にわたり紹介することで、その多様性とともに一貫した表現を露わにする。彼女の代名詞とも言える、パステルカラーや抽象性は、ひとつの考え方を押し付けるような一義的な作品になることを避け、観る人の記憶や琴線に感覚的に触れ、それぞれの見方を促すための重要な要素となっている。
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