水谷吉法
「MOONLIGHT」(2014)

⼤坪晶「Shadow in the House」

グラフィカルで色彩豊かな作品で知られる水谷吉法。もともと自然豊かな福井で育った彼は、大学生以来拠点としている東京という都市で、自然や日常の中で感じる微妙な違和感をテーマに作品を制作してきました。
世田谷に異常発生したインコの大群、多摩川で見られるユスリカと呼ばれる小さな羽虫、電線にずらりと並んだ川鵜など、被写体は時に都会にとっては公害として迷惑がられる存在でありながら、水谷の作品の中では一幅の美しい絵画のように表現されます。
この「MOONLIGHT」は、東京のとある神社の松林で撮影されたもの。本来、月明かりだけでまっ暗闇であるはずの夜空は、煌々と輝く都会の照明が反射して黄金色に輝いています。まるで金箔を貼り込んだ二条城の襖絵のよう。そこで写真でありながら日本画よろしく屏風に仕立てた、というわけです。
水谷の作品が絵画のように見えるのはなぜか。それは、カメラを駆使しているからという逆説的な答えが導き出されます。たとえば、光が充分足りているのにあえてフラッシュを焚いてみたり、被写体を接写して思い切りボカしてみたり、シャッターを切る瞬間に素早く動かしてみたり、HDRというデジタルカメラの機能を逆利用してみたり。カメラを通して肉眼では見えないものを見る。そうして見慣れた景色が、いつもと違う光景に生まれ変わるのです。

©Yoshinori Mizutani/ Courtesy of IMA gallery

Profile

水谷吉法

1987年、福井県生まれ、東京在住。
日本大学経済学部卒業後に、東京綜合写真専門学校で学ぶ。2013年にJAPAN PHOTO AWARD、2014年にFoam Talentを受賞。
ロンドンやパリなど世界各地で個展を開催。IMA photobooksより写真集を多数刊行。
作品はエルメスコレクションに所蔵されている他、スイスの国連本部のファサードに向こう5年間屋外展示される予定。

AREA展示エリア

旧大塚酒店

住所:長野県小諸市本町2-3-3
展示時間:10:00-17:00