山田梨詠
「Familie werden(家族になる)」(2017)

山田梨詠「Familie werden(家族になる)」(2017)

一見、同じ写真が並んでいるようにも見えますが、よく見ると、二枚の写真の違いに気づきます。
ドイツ語で「Familie werden(家族になる)」と題されたこのシリーズは、蚤の市やネットオークションで集めた日本とドイツの古い家族写真を元に、服装、メイクアップ、背景や小道具など、写真上の情報を入念にリサーチし、写真家自身がモデルとなって撮影し、完璧な再現を試みたもの。
家族写真とは私たちにとって一番身近で、かけがえのない写真のはず。しかし現実では時間の経過とともにどこかに埋もれ、いずれは忘れられてしまう運命にあります。山田は現代における「家族」のありようを理解する手段として、家族写真のセルフポートレイトを選びました。一人でいくつもの家族の、すべての登場人物を演じることで、21世紀において私たちは自らの手で家族を選ぶことができるし、家族のどのポジションにもなり得るという多様性へのメッセージが込められているのです。
一見、ユーモラスなパロディ写真のようにも映りますが、注意深く読み解くことで、当時の社会情勢や家族制度、ジェンダーの在り方などが浮かび上がり、深い示唆が読み取れるのではないでしょうか。

山田梨詠「Familie werden(家族になる)」(2017)

山田梨詠「Familie werden(家族になる)」(2017)

Profile

山田梨詠

愛知県生まれ。
2011年に渡独。ベルリン、ヴァイセンゼー美術アカデミーのビジュアルコミニュケーション学科を卒業後、現在もベルリンを拠点に活動している。2017年に「Familie werden(家族になる)」で、ドイツ写真新人写真賞(gute aussichten)を受賞。2018年、受賞記念展「gute aussichten 2017/2018」は各国を巡回した。

AREA展示エリア

東西自由通路

住所:長野県小諸市相生町1-1
展示時間:常時鑑賞可能